【刀剣乱舞】
和泉守兼定さんと堀川国広くんと前主と現在主で妄想いろいろほとばしって、そのまま突き進んでみました。
とりあえず一端は、了としております。
なにかしら、ツッコミやらご指導やらいただければ大変ありがたいかぎりです。
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――…他にも彼の、”兼さん”の話を教えてくれないか?
――はいはーい!兼さんはですね、前の主さんの時に…
――ありがとう。君の話で大分”彼”の事を掴み易くなってきた。
――喚べそうですか!?
――はは、本当に嬉しそうだね。ああ、そろそろ汲み上げられそうだ…
”和泉守兼定”
”己”の、名だ、と認識する。
喚ばれる。
喚ぶ声が”聞こえた”。
汲みとられ、掬い上げられる。
紡ぎだされ、形創られていく。
つよく、靭く縒り合わされ凝集され、封じ籠められていく。
聴覚を、嗅覚を、だんだんに感覚を鍛えられていく。
”己”という自我が、在る、と「感じられる」。
今思えばまどろみと言えるだろう薄ぼんやりとした、辺り一面にちりぢりに漂いたゆたう意識の中、聞こえていた言葉。
――…兼さんは、歳三さんの為だけに在った刀だったんです。歳三さんにとっては、武士として、己として生き続ける為の拠り所、誇りの在処。
――生まれてきたばかりの彼は、歳三さんの想いを受けて、歳三さんを生かすために、活かすために闘い続けた。…僕は、こんな形(なり)だから、あまり役に立てなくて……あ、でも、いざという時には僕だって役にたってましたよ!
想いだし思い出し、懐かしむような声。
少年のような幼げな声色は初めて聞くもので、無邪気な響きの中に、けれども幼いだけでは在り得ない、年長者が見守るような深さが感じられた。
己と、主である土方歳三の関係を言及できるような、懐かしく語れる声の心当たりなど、一つしかない。
てめえも喚ばれたのか。…いや、てめえが俺を喚んだのか。俺を汲み上げた奴に想いを預けて。
――兼さんは、歳三さんの事が大好きだった筈です。兼さんが俺にとってのただ一振りの本物だ、兼定(ノサダ)だ、って言って、命を預けて闘い続けた人だったから。 兼さんと歳三さんは、一心同体だった。
馬鹿じゃねぇのか、てめえの方がよっぽどあの人を好きだったんじゃねえか。…あぁ、だからそんなに、羨ましそうな…泣きそうな声してんだな。
己にとっては、唯一無二の主だった。他の選択肢などかけらも存在しなかったから、ただあの人の色に染まっていくだけだった。だけどこいつは、己などより余程長く在ったこいつは、様々な主を経てきた末に、それでもこんなに慕わしさを漂わせてあの人の事を語るのだから。
好きだったのだろう、土方歳三という主を。そして、嘆くのだろう、今にも泣きそうな声で。脇差としての本分故に、己は力及ばなかったのだと。もっともっと、大切な主の為に在りたかった、尽くしたかったと。
共に在った時には、認識しえなかった感情(おもい)という存在。
だが今は、はっきりと解る。想いを”感じる”事が解る。
なぜ、解るのか。解るようになったのか。
そういう存在へと形創るよう、鍛えあげられたからだ。
感情というモノを抱かせるように、己の存在を汲み上げ縒り合わせ、鍛え上げた”人間”。
あの人を慕いながらも、こいつが心許し、頼るように話しかける存在。
己もまた、鍛え上げるその手に、慕わしさを感じる、この”人間”はなんだ。
”人間”、あんたは、何者だ。
己を鍛え形創ろうとする存在に心惹かれ、興味という名の疑問が己の中でこだまする。
知りたい。
不明瞭な存在の正体を、己にとっていかなる意味を持つ存在なのか、その答えを渇望する一方で、明るさを装い取り繕いながら、隠しきれない泣き声もまた放っておくことはできない気分にさせられ。
あぁ、泣くんじゃねぇよ。…ったく、しようがねぇな、俺よりいい年した奴が子供みてえに、ざまぁねえったら。
抱いた感情から溢れ出す言葉は、たった一人の主だったあの人の喋り方そのままで、どれだけ己があの人に染まっていたのかとも自覚させられる。
こいつが一心同体、なんて言うもんだから余計に、だろうなぁ。
同時に湧き上がってきたのは、共に戦場に在ったこいつを哀しいままでいさせるわけにはいかない、という想い。
どうすりゃこいつをなぐさめられるんだ。とりあえず、声かけりゃいいのか?おい、どうすりゃ声がだせんだよ?
とにかくどうにかしなければ、とっとと動けよ俺、などと思い、つまりは能動的に自律しようと意識しだした途端、急激に周囲を知覚できる感覚が強くなりだした。
鮮やかな、と感じられる色彩が目に飛び込む。
吸い込んだ空気は、熱く、そしてかつて在った戦場を思い出すような、微かに噎せるような匂いがした。
「……! 、…っ」
先程まで、どこかぼんやりと聞こえていた筈の声が、今ははっきりと、息をのみこむ音、として聞こえる。
あぁ、こいつに声かけようと思ったんだよな、と改めて認識し、実際そうしようと思った途端に、自律して”動く”己の肉体を知覚した。
人間が己らの持つ肉体を言い表す五体、という言葉を、初めて得た己の肉体でもってまざまざと実感する。
目。視覚。目の前に見えるのは、自分を喚んだ者達であろう二つの姿。目を見開いて己を見つめる小柄な青年と、穏やかに微笑みを浮かべる人間。
耳。聴覚。
「か、兼さぁあああああん…っ」
目を見開いていた青年が、少しばかり少年じみた声で叫ぶ音が、突き刺さるように飛び込んでくる。
微笑みを浮かべている”人間”は、その様子に少しばかり忍び笑いを漏らした様子だが、それ以上は語ろうとしないまま。
鼻。嗅覚は、噎せるような匂いに慣れだしたのか、空気の熱さばかりを感じる。
口。口を開く、という動作を、自覚して行う。鼻から吸い込む空気に感じていた暑さを、口にまた受け止めて。
目を潤ませている存在が何なのかなんて、もはや解り過ぎる程に解っている。共にあの人の腰に吊るされ、戦場を駆け巡った存在。聞くまでもない。名乗る必要など尚更だ。
だが、目の前にいる”人間”。こいつが何なのか、俺は知らない。こいつが何者なのかを、俺は知りたい。
だから、欲求のまま、渇望のまま、その答えを得る為、名乗りを上げた。武士であるなら、己から名乗るのが礼儀なのだから。
「俺は和泉守兼定――…」
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兼さんびぎにんぐ妄想話。
唐突にはじまり、唐突におわりました。
勢い余りすぎて書いたので、整合性とかそもそも設定とか、なにそれおいしいの?なふわっふわな状態で突き進みました。
もうしばらく時間おいてみて、猛烈に反省しだしたりしたら、修正入れるか、なかったことにしてそっと消すか、あるいは無謀にも支部あげるか、…予定は未定このうえないですね。
タイトル、いっそ受肉とかにでもした方がダイレクトでいい気がしましたが、受肉にしちゃうと、イスカンダルさぁああああんッウェイバーッ…(お通夜)になっちゃいそうなので、よくわからないノリでこのまま。

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