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ネタ畑

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2012.12.24 Mon 「 クローム髑髏と10代目、及びファミリー(数年後未来) 2その他
「極限!!楽しそうだから来てみたぞ、沢田!」
「おぉー、本当だ。クロームまで戦ってるなんて、珍しいのなー」
「了平さん!山本!……ちょっと二人共、後片付けはどうしたの!?」
 現れたのは、先程雲雀と骸が争っていた最中に、これまた騒動を起こしその収集のため綱吉を引っ張り出した張本人達である、晴と雨の守護者。二人には、これまた自分達で損壊させた場所の大雑把な片付けを申し付けた筈、と眉を吊り上げた。
「いやー、面白いもんやってるって言うから―…、大丈夫だって、ツナ。片付けはちゃんと後でやるから、なっ」
「そうだ!片付けなら何時でも出来るが、これは今を逃すと見られんものだからな…!」
「二人揃って、何野次馬根性丸出しになってるの……ワイドショーのゴシップネタに食い付く主婦だよそれじゃ…」
 反省の色を全く見せない二人とますます事態収集が遠のく予感に、もはやまともなツッコミ所を見出せず呟く。
 そして、予感が当たった事を告げる、闘気を孕んだ声。
「山本武、笹川了平……、何?君達も咬み殺されに来たの?」
「……雲雀、さん…」
 ――どんだけ闘いたいんですか、あなたは――…!!
 取り敢えず、クロームと闘う手を止めてはいる様子、しかしながら、と、……一々、律儀に外野に反応してくれなくても良いのに、と悉く新手の者達に闘志を剥き出しにする雲雀に、…やっぱり雲雀さん、普段はアジトに居てくれなくて良かった、『雲』の守護者で良かった…、と、現実逃避に愚にも付かぬ事を考え出していた。それを遮ったのは、クロームの問いの声。
「…貴方達も、ボスと、戦うの…?」
「え…?」
 何で唐突にオレが出てくるの、といぶかしむ綱吉を余所に、陽性な気質を持つ晴と雨の守護者達が、クロームの問いに応える。各々に、己の主観で、質問の意図を読み替えながら。
「…おぉ!沢田と拳を交えるのは、極限!!燃えるぞ!!!」
 晴の守護者の名そのままに、己の言葉に一点の曇りも憂いも無く晴れやかに言ってのける。
 その姿に、綱吉の中に悪い予感が一気に高まった。先程までのクロームの主張。ボスを、自分を、クロームは守るのだ、と繰り返し主張していた、筈で……。まさか、と思いながらも、了平を制止する。
「止めて、了平さん…!!…無自覚に挑発、しないで――!!」
「ツナの奴、顔合わせる度強くなってるからなー、試合すんの、楽しいぜ?」
「お前までもか山本――!!さらりと爽やかに言うなってば……っ!!」
 体育会系守護者両名の底抜けに明朗な、しかしながら好戦的と言えば好戦的な物言いに、綱吉の危機感が募る。 そして、案の定。
「…そう。じゃあ、貴方達も…、敵」
 ――…敵認定しちゃった――!!!
 予感的中、と、ありがたくもない超直感を怨じる。
「獄寺隼人、ランボ、貴方達は…?」
 しかも、何かどんどんエスカレートしてませんか…!?
「俺は10代目の右腕、だ。そこの野球馬鹿とは違って、俺は何時如何なる時でも一生涯10代目のお側に在って、10代目を陰日向無くお守りし続けると誓っている」
 その言い方、それはそれで何か色々問題がある気がするけど……、取り敢えず敵認定は免れそう、と安堵する綱吉の耳に、呟くクロームの声が、小さく届いた。
「………ストーカー?…放っておくと、ちょっと危ない…?」
 うわぁ、その単語聞きたく無かった…ていうか、獄寺君ももしかしてギリギリアウトなの!?……と戦々恐々とクロームを伺うものの、…取り敢えずは、敵認定せず様子を見る事にしたらしいと、獄寺に興味を失った様子から見て取れた。
「オレは、ボスに育てられたようなものですからね。ボスと戦うなんて、そんな、滅相も無い……!」
 先程までの雲雀との闘いと、その後あっさり敵認定を下したクロームの姿に危機感を抱いたランボは、綱吉に敵意は全く欠片も存在しない、と主張した。…嘘を付け、お前さんざん昔っからリボーン狙いつつ周りを巻き添えお構いなしで攻撃仕掛けて来ただろうが!…と、内心突っ込みつつも、これ以上の戦域拡大を免れるべく、先程の二の舞はすまいと不用意な発言を呑み込み、黙り通した綱吉だった。
「………そう」
「ねえ、何時までそうしているつもり?…群れてる連帯責任で、全員、咬み殺すよ」
 闘いを再開しようとしないクロームに、雲雀が痺れを切らし、不穏な言葉を放った。
 このままうやむやの内に、闘いが収束してみたりはしないだろうかと、内心抱いていた綱吉の儚い希望は、あっさりと打ち砕かれた。むしろ状況は、守護者が一同に介してしまった時点で、最悪なものになっていたのではないだろうか、と今更ながらに後悔の念を抱く。何で、戻ってきた時、獄寺君とランボを連れてきてしまったのかと。多分、あれが更なる晴と雨の呼び水となったのだ、と。
 寄ると触ると、何かとぶつかり合う守護者達。敵意の如何ではなく、当人達にとってみればレクリエーションのような気分で居るのだろう、そのぶつかり合い。尋常でない力を持ち手加減を知らない者達が、所構わずぶつかり合えば、結果は自ずと知れるというもの。それを、気が付けば、綱吉自身が寄せ集めるような真似をしてしまっていたのだったから。
 そして。 綱吉の思いを余所に、事態は加速度的に進んでいっていた。
「…行くぞ!極限!!」
 戦列に加わったクロームが珍しく、興を惹かれたのか、了平が闘いの場へと飛び込んでいく。 そして何処までも気軽な調子の男、山本が、気楽そのものの発言でその後を追い、戦列に加わる。
「やっぱ見てるだけじゃあなー、…うん、オレも混ざろっと!」
「んなぁっ!?ちょっ、やめ、二人共――!」
 あっという間に広がった争いの輪に呼び掛ける声は、当然の如く、届きはしなかった。
「ツナ。」
 事態を面白がるよう静観していたリボーンが、おもむろに切り出して来た。
「!リボーン?」
 何か、事態を好転させる手だてでもあるのかと、見やれば。
「お前も混ざってこい!いい修行だぞ!」
 闘いの輪の中へと、蹴り出された。
「じゅ、10代目――!!…俺も、お手伝い致しますっ!!……果てろ…!」
 後を追うように獄寺の投げたダイナマイトが爆発し、爆風が背中を押した。
 ――手伝ってない、手伝ってないってば、獄寺君……っ!ダイナマイト使うなって言った側から、何してくれるんだよ……っ
「ランボ、お前も行って来い…!」
 背後、リボーンの声と、ぐぴゃ、と呻く声が聞こえてきた。
 ――本当に、…本当にもう……、……もう少し雲雀さんと周りのみんなの関係を良好にしたいとか、獄寺君達連れて来ちゃった事とか、クロームは女の子だから力ずくで止めたくないとか考えて、下手な説得しようとしたとか、…どの時点で間違ってたのか、わっかんないんだけど!
 、………もう、我慢の限界…! ホント、力ずくは嫌なのに……っ
「……くっそ…! 零地点突破・改!!!」
 乱戦、守護者達それぞれが纏う死ぬ気の焔が色鮮やかに入り乱れる中、敢えて分け入り、己の身に、その色とりどりの焔を受け止め、吸収していった。
 己の許容量(キャパシティ)ぎりぎりまでそれらの焔を受け容れ、
「…零地点突破・初代エディション(ファーストエディション)……!!!」
 一息に、負(マイナス)の境地に持っていき、解き放つ。
 迸る冷気。刹那に一面を凍らせていく、焔と対極に位置する、氷晶。焔に占められた場を一気に覆す、ブラッド・オブ・ボンゴレの中でも限られた者のみが成し得る、力。その力は、本来の焔の所有者である守護者達それぞれの力の強さそのままを返し、反逆の刃となさしめた。
 守護者達は、それぞれにすんでの所で氷の顎に呑まれるのを防ぎ、…けれど、加熱していた闘志と纏う焔を一息に冷却され、消沈させられていた。
 氷晶に覆われ冷え切った場を征するのは、橙の焔を纏い続ける、大空。
 一面を凍らせた氷晶の冷ややかさを宿したかの如き瞳で、周囲を睥睨し、守護者達が闘志を納めたのを見て取り。再び、その橙の焔を縦横、一面に放出するよう解放した。
 凍り付いた物々が、融かされていく。
 そして、辺りが元の…凍り付く直前の姿を取り戻し、綱吉は身に纏っていた焔を収めた。
 ふぅ…と、一息、深く溜息を吐き。 息を大きく吸い込む。
 そして。
「本当に、いい加減にして下さい……!!!
 山本!了平さん!あなた方は、さっきの場所の後片付けの続き!!それが終わり次第、こっちの片付けに合流…!!
 ランボは、山本達の方を手伝って。獄寺君はこっち。
 雲雀さんとクロームは…、とりあえず、あぁ、了平さん、先にこの人達治療してあげて下さい。で、それが終わったら、ここの後片付けして貰います! 良いですね…!?」
「嫌だ」
 何処までも唯我独尊、不遜の男。その間髪入れない応え。
 しかし、完全に怒りで開き直り、常にはそれが大きすぎるが故に守護者達に振り回される、譲歩の精神(こころ)を捨て去り、容赦というものの無くなった沢田綱吉に、その応えは最早通用しない。超直感で以て、確実に相手の弱点(ウィークポイント)を突いてゆく。
「雲雀さんッ!……後片付けしてもらえないなら、今後一切、オレはあなたと闘いませんよ!?仕掛けられても、死ぬ気で逃げて逃げて逃げまくりますよ?」
 死ぬ気のオレは、ちょっと凄いですよ?一生、追い掛け続けたって捕まえさせません、と脅しを掛ける。
「………っ、わかったよ…」
 死ぬ気になった沢田綱吉の、物事に対する完遂能力は極めて高い、という事は、身を以て良く知っていた。その綱吉が死ぬ気で逃げ続けるという事は。
 生涯の獲物と定めた沢田綱吉を咬み殺す事が出来ない、それは生き甲斐を奪われるという事。
 渋々と、…意のままに動かされざるを得ない事に立腹しながらも、承諾を選んだ。
「クロームも!同じ守護者同士で敵認定とかしちゃダメ!! …いいね!?」
 今の綱吉に男女の別は無く、その罰則は平等に、容赦も気遣いも譲歩も無かった。
「はい。…迷惑掛けて、ごめんなさい、ボス」
「!」
 …筈であった、が。
 良くも悪くも不貞不貞しい他の守護者達には見られない、ごくごく素直な、心からの謝罪に調子を狂わされる。殊勝な態度に、あくまで強気な態度を続けられず、甘い顔を覗かせた。 普段の少女の謙虚な性格から鑑みても、必要以上に強硬な姿勢を続ける事は無い、と。
「…うん。わかってくれれば、良いんだ。もうこんな事、しないようにね?」
「…、……それは…無理、かも」
 しかし、再び、返ってくる応えは想定外。
「え!?何で!」
 反省しても、次は有るかもってどういう事なの!?
「私が敵だって思わなくても、ボスを雲雀恭弥(あの人)とかが襲ったら、守るから。だから、ムリ。」
 ――まだ終わってなかったのその話…!敵認定止めても、結局は闘うっていう宣戦布告…!?
「………何で…こんな事に……」
 いつの間にこんなに好戦的になっちゃたんだ、クローム…、女の子なのに守護者達と一緒に居るせいで、っていうか雲雀さんと一緒に居たせいで染まっちゃって……、と内心落涙する。
「……お願いだから、あんまりケンカしないで…、クローム」
「ボス……」
「本当に、クロームは女の子なんだから、顔に傷作ったりとか余計な怪我とかして欲しく無いんだ。オレが、責任感じる。せっかく、可愛いのに。」
 惑いを見せるクロームの顔を、しっかりと見据え視線を合わせ、己の思いを語り掛けた。
「将来、お嫁に行く時とかに、後悔とかして欲しくないんだ。傷があるから嫌だとか気にしたり言ったりするヤツは、勿論問題外、オレが反対するけど!…ただ、好きな人が出来た時に、クローム自身が少しでも負い目とかコンプレックス感じちゃったり、頑張りきれなくて哀しくなるような可能性があるような事ならオレは、出来るだけ避けて欲しいと思うんだ。だから…」
「ボス、…それは、フェミニスト。今時男とか女とかそう言っちゃうのは、ちょっと、問題発言。」
「う!いや…ごめ、ん。ただ、その…」
「大丈夫。」
「…え?」
「ボスを守って付いた傷は、私の誇りになるから」
 だから、絶対に、ボスの心配するように、負い目にもコンプレックスにもなりはしない、誇り高く、顔を挙げて居られるの、と。
 自信を持って、戸惑い顔の綱吉に向かい、笑いかける。
 晴れやかに、鮮やかに。
「…!」
 真正面に位置し、向けられた本来の相手である綱吉はもとより、周囲に点在し二人のやりとりを見守っていた守護者達もまた、その、常に無い……恐らくは、初めて見ると言って差し支えない、憂いの無い笑顔に、息を呑む。
「でも、…ありがとう、ボス。」
 ――大好き。
 想いを、形にこめた。
 かつて、はじめて自分が沢田綱吉のために闘おうとした時と、同じ仕草。…けれど、そこに込めた想いは、過ごしてきた年月だけ、色彩(いろ)を変え、重みを変え、意味を変えていて。素直に、それを嬉しいと感じられる自分が、自身の想い(こころ)が、今ここに、まぎれもなく在る。
「………ッ!!!」
 一同に、驚愕が奔る。
 綱吉から躰を離し、見やった周囲の光景に、既視感を覚えた。こんな所まで、あの時とおんなじ、変わってない事も沢山ある、と。
「え、え、えええ――――!?」
 頬を押さえひたすら驚愕する綱吉の姿に、ボスの反応も変わってない、相変わらず可愛くて、懐かしい、と微笑んだ。
 『クローム髑髏』として存在を始め、『クローム髑髏』としてはじめて行動した時に、掴み得た周囲の反応。骸に与えられ孤独で始まったクロームの世界を、広く大きく確かなものへと導いた、最初の道標(しるべ)。自分は此処に在るのだと、示し教えてくれた。世界と繋がっているのはまぎれもない現実だと、実感させてくれた。
 そして。 自分自身に未来(さき)が在る世界(こと)を、進むべき在るべき場所を、教えてくれる人々を得た。骸様と、犬と、千種と、…ボス。少し認めたくないけれど、雲雀恭弥と、守護者達。――自分を取り巻くこの薄ぼんやりとした希薄な世界など何時終わっても良いのにと、一人で始まった世界が、今、こんなにも広がり、手放し難いものとなっている。
 ――その世界を守りたいから。世界を与えてくれた、愛(かな)しい人、そしてこの世界の一番真ん中にいるどうしようもなく優しい人、…そしてかけがえの無い、人達。クローム髑髏(わたし)自身が、守りたいと、望むから。守り続けると自分に誓うから。
 だから。 どうか、お願い。 ずっと、ずっと、未来(さき)まで、在り続けて下さいと、祈り、望んだ。
「後片付けしたいから。お願い、直して?」
 取り敢えず先ずは、ボスの心痛を減らす為にも後片付けをしなくては、と、晴の属性の能力、活性の特徴ゆえに治癒の力を持つ笹川了平の許へ、足を運び頼み込む。
「!…お、おお」
 クロームの行動に硬直していた了平が、促され我に返る。次いで、匣(ボックス)を黄色の炎で開匣、クロームの傷口に焔を当て、次々と焼いていく。
「………こんなもので、どうだ?」
 了平の焔によって焼かれたクロームの傷口は、細胞組織が一気に活性化され、むず痒さを伴いながら、早くも新しい皮膚の盛り上がりを見せている。
「……ありがとう。直った」
「うむ。さて、では雲雀の方にかかるとするか」
 離れた場所で雲雀に治癒を施す了平と、嫌な顔をしながらも、治癒を拒みはしない雲雀の姿を遠目に収め、クロームは、既に瓦礫の撤去に取りかかっている綱吉の側へと歩み寄っていった。10代目に近づくなこのパイナップル恥女め――!などという叫びも聞こえる気がしたけれども、ストーカー(推定)の言うだから気にしない、と聞き流す。
「ボス、怪我が治ったから、私も手伝う」
「!………うぅー…」
「ボス?」
 クロームと目が合った綱吉は、その頬を紅く染めた。
「……あのさ、クローム。その…ああいうのも、なし、だからね?」
「どうして?」
 ああいう事は、気軽にしちゃダメ、特に、本当に好きな人としかしちゃいけない事なんだから、とクロームに向かい、言い含める。
「そういう事なら…大丈夫。ボスがイヤでなければ、また今度もさせて?」
「はあっ!?」
「だって、ボスのこと、大好きだもの。……ボスは、イヤ…?」
 嫌に決まってるだろうが10代目のお気持ちなんて聞くまでもないぞこのナッポー!…と、部屋の隅、離れた位置に居る嵐の守護者が叫ぶ。その手に円筒状の爆薬が握られているのが見て取れたけれども。綱吉自身の気持ちを綱吉以外の誰にも言う資格は無い、認めないと、その叫びを無視し、目前の綱吉を見つめた。
 綱吉を見て、…真っ赤になったボスはすごく、すごくかわいくて、ぎゅうって抱きしめたくなるかも、と、衝動に駆られる。これで、ボスにイヤって言われたら、…多分、胸がすごく痛くなる、と自覚してしまった。
「!!!だ、だだだ、だめ……ッ!!!オレ、オレには、京子ちゃんていう、心に決めた人(こ)が……っ」
 イヤ、とは言われてない、よね?…だから、大丈夫。 拒絶されていなければ、否定さえされなければ、私は大丈夫。
 だから、話を続けられた。 自分の知っている事実をありのままに。
「うん、それは知ってる。」
「…!?し、知って、るの…?」
 ――誰にも言ったことないよなオレ、リボーンとかにはバレてるけど、あ、ごく一部の人には言ったか、でも、公然と口にした事は無かった、筈で……いやまさかリボーンのヤツ!?
 部屋の隅で、獄寺を扱き使っていたリボーンに目を走らせ、睨み付ける。
「俺じゃねーぞ、ダメツナ。何、他人様を疑ってやがる」
 躾を失敗したなやれやれ、と綱吉の殺意の籠もった視線を受け止めた赤ん坊、リボーンは肩をすくめてみせる。
「ボスを見てれば、誰でもわかる。…わからないのは多分、笹川京子本人と、雲雀恭弥だけ」
「!!?」
 何か、ものすごく色々と衝撃的な事を聞いてしまった気がするし……というか、それより何よりバレバレなんですか、ひた隠しに隠してきたと思ってたオレの恋心!?
「……ちょっと、何でそこで僕の名前が出てくるんだい、クローム髑髏」
 綱吉が無意識の内、敢えてスルーしようとした箇所が、当の本人の言葉に、赤裸々に白日の下に晒される。
 骸が大部分の傷を引き受けていたクロームとは違い、骸に始まり、ひたすら闘い続けていた雲雀の傷は無数に有った。未だ、壁に背をもたれしゃがみ込んだ姿勢、笹川了平に治癒を受けながら、視線だけはひたとクロームを見据え、応えを促している。
「貴方は、闘う事しか頭に無い戦闘狂(いくさバカ)だから。価値基準が闘う事でしか計れない、情緒欠陥、未発達、…心の機微が見えないこども。そんな人に、ボスの気持ちが理解できる筈がないもの」
 ――雲雀さんに向かってこの上なく堂々と、何て事を言っちゃうのクローム…!ていうか、せっかく収拾した筈のこの場に、暗雲が立ちこめるのが見える気がするのは、オレの、気のせい、だよね…?
「へーえ…?」
 遠慮なく言いたい事を言ってくるその度胸は見上げたものだね、と雲雀はその瞳に凶悪な色を湛え出す。 が、しかし。
「………、まぁ、そうだな…。確かに、色々と君の物言いには癪に障る所があるけれど…、間違ってはいないね、それ。沢田綱吉の気持ちなんて、心底興味ないし」
 まして恋愛感情だなんてそんなものに振り回されるなんて、愚かしいにも程がある、そもそも理解する必然性が何処にも見出せない、と、矛を収めた。
「…でも、僕はともかく、何でそこに笹川了平(この男)が入っていないわけ?」
 むしろ、情緒未発達と言うのであればこの男こそが一番だろう、と続ける。
「む、オレか――!?」
「ちょっと、耳元で大声出さないでくれる?咬み殺すよ」
「おお、スマン。 しかし、聞き捨てならんぞ雲雀!オレには中坊の頃から、色白の娘という極限惚れ込んだヤツがいるのでな!沢田の気持ちなど極限お見通しだ!!」
「だから五月蠅いよ、ていうか、それこそ君の話なんかどうでも良いよ」
「何を言う!そもそもお前がオレの名を出したからではないか!」
「忘れたよ」
「貴様……若年性健忘症か…!?」
 それはオレにも直せんから速やかに病院へ行け、と助言する。天然節炸裂である。
「違う。それを言うならまさしく君こそがそうだろう極限バカ、今すぐ精密検査を受けて来ればいい」
「極限大丈夫だ安心しろ!必要な事はメモに極限残す事にしているからな!…ああ、そうだ、沢田の気持ちを知った日の事も、笹川家にとっては極限重要事項と思って、メモを取ってある…!ついでに、沢田に『お兄さん』と呼ばないよう取り決めた日と理由も記録に残してあるぞ!…メモを見返さんと、極限説明できんがな!」
「りょ、了平さん…!」
 お願いだからこれ以上、何も言わないで思い出さないで忘れたままでいて下さい――!…と、息尽かせぬ晴と雲の守護者、元並中上級生コンビの掛け合いに、ようよう、口を挟む間を見つけ、制止の声を綱吉が挙げる。
「…仲が、良いのね」
「え!?いや、クローム。多分それはちょっと、違う…」
 お互いに他人の話を聞かない人同士で、勝手に喋りあってるから不思議に噛み合って見えるだけ、根本的にはお互い自分の言いたい事言い合ってるだけあれは多分、と、何処とはなしに羨ましそうにも見えるクロームの誤解を助長させないよう、綱吉が歯止めに入る。
「でも…言いたいことを遠慮なく言い合えるのは、恐れなくて良い関係だから」
 絆が切れることも、失うことも恐れる必要はない関係。今手の中にある世界を、これ以上失わないようにと恐れ、偽る必要も、遠慮も無い関係。…それは或る意味、信頼という絆の存在にも見えて。…多分、雲の守護者には、そんな情緒なんて存在しないはずだけれど、それでも。
 ――『凪』として生きた13年間と、骸様の器として生きてきたクローム髑髏には、築けなかった関係。…羨ましい、と。ボスの周りに在る事で、あの雲の守護者、雲雀恭弥ですらも、無意識に他者との絆を得ているのだと、羨望の想いを抱く。
「…ちょっと、うらやましい」
「! クローム…?」
「ボスの側は、色んな人達が集まっているのね。ボスを真ん中にして、みんなそれぞれ繋がっている。守護者一人一人を見たら、絶対考えられない組み合わせなのに…ボスが居ると、それが当たり前に見えてくる…。遠慮も何もいらない、それぞれが、それぞれのしたいように、生きていられる。…あの人達…守護者達が、うらやましい」
 繋がっているのは当たり前の事で、それを意識する必要すらない関係を築いているのだと。ボスが全ての中心で、みんなの居場所を当たり前のように作ってくれているから、あんなにも守護者達は自由に、思うままに在れるのだと。…だから、ボスの側に居られる守護者達がうらやましい、と、羨望の想いを明かした。
 かつては、死んで消滅していくだろう自身の存在を、ただ他人事のように受け容れていた自分が、今は、存在が消えて喪くなる事に脅えていた。 骸と同化していき、何時かはもしかしたら消えていってしまうかもしれない可能性。 崇敬、或いは魂の根源から依存しているとも言えるだろう、骸のために在れる事は、この上無く幸せだと思える自分。 けれど、同時に、そう思う自身の存在が消えていくかもしれない事に、この上無く脅えている。 そして、もはや骸の事だけが己の全てでは無くなってしまい…気が付けば、クロームという自分の中に、自分を取り巻くものたちへと様々な想いを抱いてしまっていた自分がいて。
 骸と分離しきらなかった自身の存在の不安定さを自覚し、それによってはっきりと認識し得た自身の意思の存在。その意思の発端こそは、目の前の青年の存在であり、そして。自覚する、何処までいっても曖昧な自身の存在の所在を。
 ――私も今、『私』自身の願いが在る事を、ボスが居るから、自覚できた…。でも私は…厳密に言えば守護者ではないのだから。側に居て、ボスを守ると自分に誓ったけれど、本当はそんな資格、無いのに。 …でも。でも、側に居たいよ、ボス。
 …だから。
 側に居られる立場を、求めればいい。自分の意志で。自分の持てる全てで以て。
 己の中、一つの答えを見出しかけ、その屈折した感情の発露のようにも思える結論に、…それでも求める立場を得るためならばと、覚悟を作り上げるクロームに、綱吉の声が耳を打った。
「クローム!何で、そんな風に考えるんだよ」
「…え…?」
 出しかけた結論、己の中の屈折した想いとはまるで異なる響きのそれに、戸惑いの声をあげた。…何処までも真っ直ぐに前を見据え続け、あたたかさを、希望を与えてくれる存在(ひと)の声。
「クロームは、クロームだろ?オレの側に居るからとか、守護者とか、そういう事は全然関係無くって!クローム自身が望むことしたい事、自分で考えて選んで、すれば良いんだ、ただ、それだけの事だろ!? …骸の事とかあるから、もしかしたら、それで自分を抑え込んできちゃったのかもしれないけど、」
「! 違うボス、骸様の事は、私自身の意志。骸様の役に立ちたいから、だから…、」
 自分を初めて必要としてくれた存在(ひと)。自分という存在を創り上げてくれた存在(ひと)。だから、その存在(ひと)のために、孤独な狭い世界をはじめようと、原初の時己に誓った。それは、本能にも等しい、己自身の意志とすら自覚できぬ程の、根元的なこころ。
 そして、その存在のために沢田綱吉を守るのだと、はじまりはそうだった筈なのに、……いつの間にかその想いに加えて、その存在のためのみではなく、自分自身こそが沢田綱吉を守りたいのだと、否、その存在からすら守り仰せてみせるという、新たな望みを得てしまった事を、…沢田綱吉という存在に因って、知ってしまった。そしてまた…その望みを、己の想いを隠したまま建前を唱えることで果たそうとしてしまえる醜さを。
「……ごめん、そっか、そうだった……。…だからさ、骸の事もクロームの望む事だっていうなら、骸の事以外だって、一緒だろ?…確かに、不用意に人を傷つけてしまう事まで、思うまま自由に振る舞うのは駄目だと思うけど…、自分の気持ち表すのに、遠慮する必要は無いだろ?」
 気落ちしたようにも見える様子のクロームに、励ますよう、綱吉は笑いかけた。
「オレは、クロームが、クローム自身の望む生き方を選べるよう、必要なら手伝うよ?…雲雀さんみたいに自分で生きる場所を作るのなら、それを作る手伝いぐらいオレにも出来る筈だし…。勿論、クロームが此処に居ることを望むのなら、ずっと此処に居てくれれば良い。居場所なら、幾らでもあるんだから。」
 何しろ地下だからいくらでも拡張し放題の場所だし、と和ませるよう続け。一転、真剣な光をその瞳に湛え、クロームに語りかける。
「…もしも。もしも今、クロームが自分を抑え込んで、自分の望むよう生きていないって言うのなら、オレは、クロームが我慢しないでクロームらしく生きられるように、オレの出来る限りで応援する」
「………ボス…」
 ゆるり、と穏やかに、綱吉は笑い掛けた。
「大きな事言うようだけど……、前に、雲雀さんにも言った事なんだけどね…、オレは、みんなで笑い合える場所を作りたいんだ。みんなの居場所、帰れる場所になりたい。…それが、ボンゴレ10代目を継ぐって決めた時の、オレの気持ち。…ねえ、クローム。失う事が怖いって言ったけど…、全てのものを持ち続けられるかまでは、オレにも絶対大丈夫なんて言い切れないけれど…、それでもオレは、少なくともオレは、クロームの側から居なくなったりしないよ?君が望むなら、オレは側に在る。オレ自身の、意志で。何時でも君の居られる、帰れる場所を作って、待っているから。」
 何も、我慢をする必要なんて、無いんだ。思うように生きられる場所を、オレは作るから。そのために、オレはボンゴレの10代目を継いだようなものだから。それぐらい、ボンゴレ10代目なんだからやってみせるよ、と笑いかける。
「…それにね。みんなもきっと、ありのままのクロームを受け容れてくれる。…だって、それこそクロームが言ったみたいに、それぞれがそれぞれに、自分勝手に生きてるからね。……本当に、もう少し、自重とか遠慮とかいうものを覚えて欲しいって常日頃、胃が痛くなるぐらい思ってるんだけど…、まあ、そんな人達だからさ。今更クロームが好き勝手した所で、否定するどころか、むしろ面白がるんじゃないかと思う」
 現に、さっきあれだけ散々物見高く雲雀さんとの闘いを見物に来たあげく、自分達も嬉々として闘いに飛び込んでいってくれたしね…、と一瞬遠い目をした。そう、出来れば、思うままに振る舞ってくれるのは大いに結構だけれど、暴れるのは控えめにして欲しいかな、と。
「我慢、しなくて良いの?」
「クロームの望むように、生きて欲しいって、オレは思う」
 闘いに関しては…出来れば自重して欲しいけど。
「私の、望む事…」
 ボスの側に居たい。ボスを守りたい。ずっと、一緒に居たいから。『私』は此処に在りたい。…それが、正直な自分の望み。
 けれど、私自身の想いは。
 ボスの一番…じゃなくても、いい。真の守護者で無くても、いい。
 側に居られる関係を望むならば、そうやって自分の気持ちに嘘を吐いて隠して、建前を口にすれば適うから、と導き出す、…屈折した想いを内包した、その答え。 醜い、歪な、私の願い。
 望みを果たすため、口にする。
「それなら、…ボス。私を愛人にして?」
「…………………………」
 けれど、自分なりに、真剣に考えだした望みに対する応えは、沈黙でもって、迎えられてしまった。
「…………………………………あれ?」
 何か、空耳が聞こえた気がする…気のせい?、とクロームの問い掛ける視線の先、綱吉は首を傾げた。…あちらこちらが穴だらけになった部屋の中、何故か空気が一気に重くなった気がする、と。散々喋り通したせいで、ちょっとオレも疲れたのかな、と。
 綱吉の代わりだとでも言うように、外野がざわつきだした。
「待て待て待て――いっ!!沢田は将来、オレの義弟になる男だ――!!!」
 笹川了平が、吼えた。
「『お義兄さん』と呼ばれる日を待たずして愛人など、オレは極限に!!認めんぞ……ッ!!!」
 そこへ直れクローム髑髏っ!!…と、治療していた雲雀を放置し、拳を構えだす。
「………あ、い、じ、ん、だ、ぁ……?」
 部屋の片隅、蹲った塊がふるふると震えながら、低く呟く。心なしか、纏う空気がドス黒い。…本来その塊が纏うべきは紅の焔である筈だったが。
 その塊が、ゆらり、と立ち上がった。両手にはありったけのダイナマイト。口許には数本の銜え煙草。クロームを睨め付ける目が、果てしなく据わっていた。
「10代目には……愛人だなんて、そんな似合わない存在は必要無いんだよ……。そんな、お人じゃねえんだ10代目はなぁ…」
 オレの親父のような、人非人じゃあねぇんだよ、と昏い目つきで続ける。
 その、嵐の守護者…獄寺の様子に、若干フォローの必要性をクロームは感じ、口にした。
「ボスを守るために、一番近い場所が良いから…、愛人にしてって言ったの。別に、実質的な意味での関係は、求めていないわ」
「側にいて守るって言うけど君…、君には六道骸が繋がっているだろう。あいつこそが、沢田綱吉の命を狙っているはずだけど、何を考えているの」
 愛人という単語に関しては、さして興味も湧かなかったらしい雲雀が、根本的な事だけれど、と、疑問を口にする。六道骸が関わっているとなれば大問題だよ、と。
「僕の獲物の側近くに、むざむざ危険分子を置くのを黙って見過ごすつもりはないんだけど?」
 それに対する応えは、既に、確実なものとして、クロームの中には存在していた。
「骸様からも、私はボスを守る。」
「……へえ」
「…だから、ボスの側にいる必要があるの。真実の(ほんとうの)守護者とは言えない私が、いつも側に居るために必要な口実…肩書き。愛人が、一番便利だと思うから」
 私が女で良かった、と続ける。
「良かったじゃねえかツナ。内実共にって訳じゃぁないのがダメツナのお前らしいが、実状はともかく、対外的にはマフィアのボスとしちゃ、箔が付くぞ 」
 ニッ、と口端を持ち上げて言い切ったのは、リボーン。家庭教師としちゃ、ここら辺の事ダメダメのお前に期待もしちゃいなかったんだが、一気に愛人となれば大金星だぞ、と、唯一人、クロームの肩を持つ。
「……だ、」
 クロームの発言を、認識したくないあまりに空耳だと断じ、思考を放棄していた綱吉だったが…、さすがに周囲の立て続けに連発する単語に、現実を認め、呟く。 だ、と。
「沢田!」
 無論断るであろうな!、と綱吉を振り返る了平。
「10代目…?」
 お気を確かに…!、と獄寺。
「………」
 興味が失せてきたのか、ふぁ、と欠伸をしながらも、綱吉を見てはいる雲雀。
「…ボス?」
 これが私の望みだから、と返事を求めるクローム。
「言いたいことがあるならぐだぐだしてないで、とっとと吐きやがれダメツナ」
 あんまり煮え切らねぇようなら死ぬ気弾撃ち込むぞ、と、家庭教師が銃を構える。
 一様に、一同は、次に続く言葉は何なのだ、と綱吉を見つめていた。
「駄目――!!!
 愛人なんて、絶対に駄目…ッ!! 何考えてるんだよ!?そんなの、クロームの保護者のオレが一番、赦せないに決まってるだろッ!!」
 あくまで、自分はクロームの保護者なんだから、ちゃんとした相手を見つけるまで責任持って預かる立場なんだから、と主張する。
 つまんねぇヤツだなダメツナ、だからお前は何時まで経ってもダメツナなんだ、とリボーンが吐き捨てたが、激昂し言い募る綱吉の耳には届くことも無く。
「それに、本当の守護者じゃないって、何だよそれ!クロームだって、守護者なんだよオレの!クロームも骸も、霧の守護者は二人で一人、どっちも欠けちゃだめなんだ!」
 キッ、と音が聞こえそうな程に、力強くクロームに視線をぶつけた。
「ボ、ス…?」
 自分は、あくまで、霧の守護者である六道骸の宿体(うつわ)であるから、何処までいっても仮初めの守護者でしかないと、自分で自分を断じていたのに。認められてしまっていたなんて、そんな事、知らなかった。…欠片だって考えもしなかった。
 当たり前の事だと、認められてしまっていた、なんて。…ボスは、ずるい。優しくて、ひどい。そんな事を、言ってしまうなんて。思っててくれてたなんて。…嬉しさのあまり、罪もないボスを詰ってしまう、自分勝手な心。教えてくれなかったから、自分は守護者じゃないなんて、きっとボスを傷つける言葉を、口にしてしまった、と。
「まして、守護者じゃないから愛人にしてなんて…。そんな事絶対に、絶対に言っちゃ駄目、オレは赦さないから!」
 強く強く己の想いをぶつけ、それから、綱吉はその激昂を緩ませ、続けた。
「…自分の事大事にしないクロームは、嫌いになるよ?みんなが、堂々と自分に自信を持って、胸張って、そうやって笑い合えなくちゃだめなんだ。オレは犠牲なんて認めない。…だからクローム。絶対に、目的のために、自分の気持ちを押し殺しちゃうような、そんな立場を選ぶような真似はしないで」
 しきりとクロームが口にしていた「ボスは私が守る」という言葉。「側に居たい」という言葉。それらを繋ぎ合わせて綱吉が出した、綱吉なりの、クロームの望みの在処。綱吉を守りたいがためだけに、これから未来(さき)にクロームが持っているだろう可能性を犠牲にして、その望み…目的達成と効率を優先した、自己犠牲に成り立つ願いなど認めはしない、と、言い説く。
 他者に犠牲を強いさせはしないという確固とした沢田綱吉の意思。恐らくは、クロームの想いを想像だにしない、だからこそ焦がれる、真っ直ぐな精神の持ち主。
 だからこそ、敢えてクロームが口にしなかった自身の想い。そして、汲み取られきれない想い。生じる意思の齟齬。
 想いを口にしない限り永遠に続くだろうそれらに、けれどそうであればこそ永劫続く筈の絆の喪失を避けるため、綱吉の真っ直ぐな強さに惑いが影が差す事無いようにと、想いを口に上らせる事は無く。ただ、綱吉を安堵させようと、言葉を発した。
「…ボスの事ね、優しいから好きで絶対守りたいって思ったけど、守護者じゃない自分が傍に居られる理由が無くって、…だから、私が女だったから、丁度良い名案だと思ってたんだけど…、勘違い、だったみたいだから。」
 だから大丈夫、忘れて?…と続け、微笑みかけた。
「わかってくれたなら、いいんだ」
「守護者として、此処に居て、いいんだよね?」
「守護者としてでなくても、クロームが此処に居たいのなら、望む限り何時まででも」
「……うん。ありがとう、ボス」
 そして、ごめんなさい。
 どうしたって、ボスの言うとおり、自分の望むままに気持ちを表すことは出来ないから。 望みを果たすために、私自身の意思を貫くために。此処に居て、あなたを守るから。だからどうか、自分の想いに嘘を吐いて押し込める事を赦してほしい。
「結局の所、ダメツナはどこまでいってもダメツナのままだったな」
「何勝手に期待かけておいて勝手に失望してんのさっ!」
 儚い夢だったな、と 肩をすくめるリボーンに、綱吉のツッコミが追いかける。
 それを楽しげに見守り、或いはその会話に積極的に関わろうとする、そしてまた、興味なさげに振舞う、思い思いの守護者達。
 いつの間にか、クローム自身も見慣れてしまった、ボンゴレファミリー、アジトにおける光景。
 中心には、表情豊かに、目を白黒させたり声を上げつつ…てらいのない笑みをその瞳に浮かべる、綱吉の姿。
 守りたい、と思う。この人の、このありのままの姿を。
 そのために、嘘をつくの。
 女の子だからと言うボスの言葉。 でも、女だからこそ私は、ボスが望まないと知っていても愛人になりたいと思った。それが、本当の気持ち。側にいて、いつか、私自身を必要として、ほしがってくれればいいのにと思ったから。
 ねえ、女の子だと言うのなら、女としての私も見て?
 そう、思ってしまう自分がいる事に気がついてしまったけれど。
 だけど、それを口にしたらきっとボスは私を側においてはくれない。
 だから。
 私が、せめて少しでもボスの側にいられる場所が欲しいから。
 だから、本当に、本当に好きな気持ちは隠して、守りたいという言葉に、振舞いにすりかえるよ。
 側にあるために。
 守護者としてあるために。
 だから、オブラートに刳るんで、守護者の体裁整えた気持ちだけは、伝えさせて?
 骸様にはない、私だけの心からの、この気持ちを。



END.

[ずっとラストが詰められずに放置していたネタだったのですが、これを機に、見直して、終わり部分をすっきりざっぱり切ってみて、一応エンドマークを付けてみました。クロームの心情を軸に、和気藹々、ギャグパート入れつつ戦闘シーン入れて、ボンゴレ10代目ファミリーネタ書きたくて書いたもの。……10年後編完結しちゃって、なおかつおしゃぶり編始まっちゃってる現在では通用しない設定なんですが…苦笑。妄想ほとばしった捏造設定話、ということで、流して頂ければ幸いです]

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