見捨てないでくれと、普段、見栄を気にしすぎる男からはかけ離れた、いっそ、見苦しい程に、溺れる者が足掻くよう、すがりついてくる様は、
哀れを誘い、 どこまでも自分本位の行動で。ジュードの心など、表向き気遣うそぶりを見せながらも、その実、気にもとめていないのだ。
このまま、切り捨ててしまえばいい。見捨ててしまった所で、裏切りに彩られたこの男の言動を知る者達からは、肯定の頷きすら得られる気がする程度には…それまでの行動に言い訳が効かないということも、また、自身でも理性では理解していることだろう。
どの面下げて、と、吐き捨てたくもなる。
けれど、そんな所に重ねて来た言葉が、心を抉る。
「もう、俺にはお前しかいない…」
「……う、」
嘘吐き、嘘をついているくせに、ととっさに口をついて出そうになる言葉を、けれども、押さえ込む。
きっと、この言葉を耳にしたならば、あまりに耳慣れたであろう、この言葉を、今の目の前の、助けを求め溺れかけたこの男が聞いたならば、虚飾する事すら出来なくなったこの人が聞いたなら、なけなしの勇気を振り絞って伸ばしただろう手を、拒絶と断じて、二度と自分に助けを求める事は出来なくなるのだろう。
臆病な男。脆い心のまま、誰かに助けを求めながらも、踏みにじり、
情けない男、愛しい(かなしい)男

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