裏切られた、と、そう、思ったけれど。
けれども、思えば、アルヴィンの行動の端々から、その兆候が読み取れなかったのかと言えば、…事の次第を知ってしまった今から思い起こせば、おかしな行動は幾度もあったわけで。
そう。一瞬押し黙った後に、アルヴィンが口に乗せる言葉を、ただそのままに受け止めなければ。その行動を、表情を、彼の全てを注視していれば。本質を伺い知ろうとその瞳を覗き込めば、恐らくは、―全てではないにしろ…、何かしら、理解できたかもしれないのだ。
アルヴィンの、行動を。その理由を。
アルヴィンを信じている、という自分のその思いは、実の所、ただただいい子でいようとする、大人の言葉は鵜呑みにしようとする、そんな前提があったからに過ぎないのだと、今更に気が付いてしまった。
子供、だったのだ。
周りを見ようとせず、己の思うままに世界はあると信じ、がんぜなく、盲目的に、己の理想のままに世界は存在してくれる筈だ、と。どこかで未だ、甘え続けていたのだ。
自分を取り巻く世界は、牙を剥く事などない、と。
僕は、見極めようと思う。
世界の姿を。
口から吐き出される言葉の並びだけを、頭で斟酌するのではなく、その言葉を綴る人の、その思いを、行動を、言葉の裏にひそめられた、心をこそ。
時に、言葉として綴られない、呼吸(吐息)であったとしても。
真に、その人が何を望むのか。
感情と、言葉は、時に裏腹に過ぎて。
コイツが、言葉の裏に隠された真意を読み取ろうとするようになったのは、俺のせいなんだろう。
従順に、大人の言葉を最終的には受け入れる姿勢が、いつの頃からか影を潜めた。
ただ鵜呑みにするのではなく、相手の瞳を覗き込むように、じっとその表情を読み解こうとするようになった。
言葉を、安売りしなくなった。
含みを持たせる言葉をに、敏くなった。
◆ ◆ ◆
終着点が何処にあるのか良くわからないまま、何となく思い立ったのでメモ。

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